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気候変動目標に近づいたキヤノンが次にすべきこと(サステナビリティレポート2024分析)

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Action Speaks Louder(以下ASL)がキヤノンに対し、より野心的な気候変動対策を求めるキャンペーンを開始してから2年。キヤノンはそれに向けて少しずつ前進しているかもしれないが、最も重要な目標の設定と公表にはまだ至っていない。

再エネ大幅増も目標設定の兆しなし

4月24日、キヤノンは「サステナビリティレポート2024」を発表した。注目すべきは、キヤノンが2030年までに60%の再エネを使用し、その後再エネ100%を達成するために目標設定をするというASLの要求にコミットしなかったことである。これは、ソニーやニコンといった競合他社とは対照的な動きだ。しかし、2022年の4.54%から2023年には12.87%と、再エネの使用は大幅に増加した。さらに、キヤノンはこの1年間で、スコープ1と2の排出量を10.26%(104,815 t-Co2)削減した。

ASLが2022年にキャンペーンを開始した直後に、キヤノンが再エネを大幅に導入したことは、GHG排出量を削減するために再エネを拡大するという具体的な進展を示しており、キャンペーンにおける成果の現れであると考えられる。

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Canonの再生可能エネルギー取り組み推移 (2019年から2023年)

正確には、キヤノンが再エネの使用量を毎年同率またはそれ以上のペースで増やし続けることができれば(すなわち、再エネの年間8.33%の増加)、2030年までに再エネ60%を達成することができる。さらに、キヤノンがCo2排出量の年間10.26%削減を維持または増加させることができれば、キヤノンはスコープ1と2の排出量を42%削減するという2030年の目標を達成することになる。ここでのキーワードは、「もし 」である。

この予測は楽観的であり、キヤノンが排出削減目標の達成に必要なスピードで再エネを拡大し続ける保証はない。軌道を維持し、今後数年間で再エネをどのように拡大するかを透明性をもって証明するためには、達成年度を定めた上での再エネ目標が必要である。キヤノンは、2030年までに60%の再エネを導入し、全世界で100%の再エネを目標とすることを公言する必要がある。

きっかけは何だったのか? 再エネ取り組みにおける過去5年間の変化

2022年12月、まさに世界中で企業の脱炭素化が議論の対象となっていたタイミングで、キヤノンは気候変動対策の大幅な引き下げを発表し、目標を後退させた最初のグローバル企業のひとつとなった。2030年の絶対排出量削減目標は、当初の2008年比50%から2018年比30%に約半減し、再エネの使用率はわずか4.54%にとどまった。

2023年11月、キヤノンは自社の新たな排出量削減目標がSBTiの認定を取得したことを発表した。2022年を基準として、2030年までに事業活動の排出量削減目標を23%から42%に引き上げるという目標だ。完全ではないが、これは正しい方向への一歩である。しかし、この目標を達成するために再エネの利用大幅が必要不可欠であることが明確であるにもかかわらず、キヤノンは再エネの目標を発表していなかった。

さらに深刻なのは、キヤノンの競合他社(プリンターメーカーもカメラメーカーも)はすでに野心的な再エネ目標を掲げており、キヤノンは遅れをとっていることである。エプソンは2024年1月、日本を含む全世界のグループ拠点で再エネ100%を達成したと発表した。同様に、HPは2025年、ソニーとニコンは2030年、リコーと富士フイルムは2040年までに再エネ100%を公約している。

キヤノンが自社の排出量削減目標を達成し、競合他社に追いつきたいのであれば、再エネ100%の目標を設定し、2030年までに少なくとも60%の再エネを目指す必要がある。

何百人ものサポーターが、キヤノンのサステナビリティ・チームに時間を割いてメールを送り、再エネ目標の向上が消費者にとって重要であることを伝えた。ASLがキヤノンの再エネ取り組みに関する報告書を公開し、上記のメールアクションを開始してから1週間後、キヤノンは「印刷製品を製造する拠点で使用する電力の100%を再エネに転換するよう取り組んでいる」とするプレスリリースを発表した。キヤノンは消費者の声に耳を傾けているようだが、具体的な取り組みや求められているコミットメントには欠けている。

株主総会でのアプローチとキヤノンの反応

2024年3月28日に開催されたキヤノンの定時株主総会で、キヤノンの株主であり、ライター / アクティビストである佐久間裕美子氏とともに、キヤノンのサステナビリティ推進本部長である郡司典子氏に対し、競合他社に追いつくために再エネの目標を引き上げる計画があるかどうかを尋ねた。

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キヤノンの遅れた再エネ取り組みを周知すべく、株主総会前日には日経産業新聞に意見広告を掲載した。広告には、キヤノンが再エネに対する意欲が競合他社にどれだけ遅れをとっているかを示すグラフが掲載された。株主総会当日は、キャンペーン担当者とボランティアによって、この新聞がキヤノンの株主と従業員に配られた。

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佐久間氏の質問に対する郡司氏の返答は期待外れだった。キヤノンは競合他社の取り組みを認識していないという。キヤノンは、株主や消費者、そして市場全体から再エネの利用を拡大するよう求められていることを認知しており、1年間で再エネの使用量を8.33%増加させるほどの認識を持っていることは確かであった。

キヤノンが求められるアクションとは?

キヤノンのサステナビリティレポート2024は、同社がより野心的な気候変動対策を推進していく可能性を提示しているが、現状まだ十分ではない。達成年度を定めた具体的な再エネ目標があれば、キヤノンは説明責任を果たし、進捗状況を追跡することができる。

キヤノンは、再エネ100%を達成するという幅広い目標の一環として、2030年までに再エネ60%を達成するという、期限付きの目標を設定する必要がある。これはキヤノンにとって実現可能な目標である。今、キヤノンはそれを公に約束する必要がある。

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